TCFDがより厳格なIFRS開示基準に発展、有報への影響も解説!
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記事のポイント
- TCFDは複数の気候変動シナリオを想定し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4項目に沿って、気候変動のリスクと機会が自社に与える財務的な影響を開示するための枠組み(フレームワーク)
- 2023年にTCFDは解散したが、気候変動が企業の財務に及ぼす影響を開示する枠組みとして引き続き有効
- TCFDの枠組みをとりいれた新たなサステナビリティ情報開示フレームワーク(IFRS S1、S2)の発表を受けて、国内では有価証券報告書での気候関連の情報開示が2026年3月末以降必須となる予定
※サステナビリティ基準委員会(SSBJ)から2024年3月末に公開草案が発表され、有報での情報開示はプライム上場企業の一部から順次適用する方針となりました。詳細は弊社記事「SSBJの日本版サステナビリティ開示基準草案公表 プライム上場企業の一部は2027年3月期から有報での開示義務化を検討」をご参照ください。
TCFD設立の経緯と主な開示内容
近年の気候変動問題の深刻化に伴って、2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」が締結され、すべての締約国に対して温室効果ガス(GHG)の削減と目標の提出が求められることになりました。金融面では、低炭素で気候変動に対して強靭な発展に向けた道筋に合致する資金の流れを作るという目標が定められ、先進国は気候関連資金の動員に主導的な役割を果たすべきとの規定が盛り込まれました。
上記を受けて、金融業界を中心に、投融資先企業の気候関連リスクの低減と機会の獲得を後押しするとともに、脱炭素化への移行(トランジション)を金融面から促すトランジション・ファイナンスの考え方も浸透しつつあります。
そんな中で、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB: Financial Stability Board)がTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)を2015年に設立しました。2017年に最終報告書が公表され、企業などに対して、気温上昇が産業革命以前の4℃以上の世界、1.5℃未満に抑えられ脱炭素に移行した社会など複数のシナリオを想定したうえで、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標の4項目に沿って、気候変動のリスクと機会が自社に与える財務的な影響の開示を推奨しています。
●開示推奨項目
ガバナンス(Governance):どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。
戦略(Strategy):短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えたか。
リスクマネジメント(Risk Management):気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。
指標と目標(Metrics and Targets):リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。
2023年6月、国際会計基準を策定するIFRS財団の傘下にある国際サステナビリティ基準審議会(ISSB:International Sustainability Standards Board)により、TCFDの開示枠組みをとりいれた国際的なサステナビリティ情報開示基準(IFRS S1、S2)が定められました。それに伴い、TCFDは2023年中に解散しましたが、気候変動が企業の財務に及ぼす影響を機関投資家などに対して開示する枠組みとして引き続き利用できます。企業の情報開示の進捗管理とレポート発行はISSBが引き継ぐ予定です。
自社の戦略策定や情報開示の状況に合わせた情報開示が重要
日本では、2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂により、プライム市場上場企業は2022年4月から「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実」と、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の提出が義務化されました。
一方で、全上場企業が対象となる有価証券報告書について、2023年3月末以降、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の項目が新設されました。サステナビリティ共通項目の「ガバナンス」と「リスク管理」の記載が必須となり、「戦略」および「指標と目標」については重要性に応じて記載が求められます。
2023年12月末時点で、有価証券報告書における気候変動関連の記載は必須ではありませんが、ISSBの基準を基にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が開示内容を検討しており、2024年3月末までに草案が公開される予定です。最終案は2025年3月末までに確定し、2026年3月末以降適用が開始される予定となっています。
先述したように、TCFDの枠組みは現在でも有効です。未対応の企業は、まずTCFDに沿った情報開示を準備することが重要です。既に対応済みの企業は、現時点での開示内容を基に、IFRS S1、S2への対応を進めるなど、機関投資家をはじめとするステークホルダーからの要請や、自社の経営戦略に沿った情報開示を進めていくことが求められます。
TCFDを含む気候関連戦略の開示支援
Value Frontierでは、2006年の創業以来、脱炭素戦略を経営戦略に統合し、環境価値と企業価値の向上を両立させるための具体的なアクションや情報開示の支援を総合的に実施しています。有報へのサステナビリティ情報開示に対応したいが何から手を付ければわからない段階から、複数の気候変動シナリオに基づいた世界観の構築、気候関連リスクと機会の経営戦略への統合、GHG削減指標と目標の設定など、お客様の状況やご要望を丁寧に確認したうえでご支援します。
主なサービス内容
・社内浸透
TCFD対応の重要性、目的などのレクチャー、開示目的に合わせた社内体制づくりの支援など
・世界観の構築
産業革命以前と比較して4℃以上、1.5℃未満など複数の気温シナリオに基づく世界観の構築
・経営への統合
リスクと機会の整理、財務影響算定、戦略策定、方針策定、情報開示など
ValueFrontierの特徴
・機会の提案力
リスク対策にとどまらない機会の提案⼒
20年以上にわたり事業を通じた環境課題解決を支援してきた実績
・国内外のネットワークを活かした強力なチーム
創業来30か国以上での調査・コンサルティング実績
国内外のNGOや専門的な人材との多様な連携ネットワーク
・環境影響の見える化を基礎としたデータに基づくコンサルティング
LCA、CFP、GHG算定などのデータに基づく環境影響の見える化に関する多数の支援実績
開示枠組みに沿うだけでなく、納得・説明できるデータに基づく情報整理
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